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日本の多様な自然を守る自然環境保全地域
日本の自然環境を保護し、未来へ繋げるために指定されている「自然環境保全地域」
その広大なエリアには、貴重な動植物が生息し、手つかずの自然が残されています。
大きく分けて2つのカテゴリーがあります。
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原生自然環境保全地域: 人間の活動の影響をほとんど受けておらず、原生の自然が保たれている、まさに「自然の聖域」と言える地域です。
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自然環境保全地域: 優れた自然環境が維持されている地域で、特に保全が必要な場所。
原生自然環境保全地域ほど人の手が加えられていないわけではありませんが、貴重な自然を守るため、保全活動が行われています。
自然環境保全地域は、日本の優れた自然環境を保全するために、環境省が指定する地域。
国立公園、国定公園、都道府県立自然公園といった様々なカテゴリーがあり、
それぞれに異なる保護レベルが設定されています。
下記の表にそれぞれの概要をまとめました。
カテゴリー | 概要 | 保護レベル | 例 |
国立公園 | 我が国を代表する傑出した自然地域。自然の維持と科学的研究、自然とのふれあいの場の提供を目的とする。 | 厳格 | 知床国立公園(北海道)、屋久島国立公園(鹿児島県) |
国定公園 | 国立公園に準ずる優れた自然地域。 | 中程度 | 丹沢大山国定公園(神奈川県)、妙高戸隠連山国立公園(新潟県、長野県) |
都道府県立自然公園 | 各都道府県が指定する自然地域。地域の特性を活かした保護と利用が行われる。 | 比較的緩やか | 奥多摩県立自然公園(東京都)、琵琶湖県立自然公園(滋賀県) |
これらの地域では、開発の制限や動植物の採取規制などが設けられており、自然環境の保全に重要な役割を果たしています。
しかし、指定地域外でも貴重な自然は存在しており、地域住民やNPOなどによる保全活動も重要です。
代表的な日本のなかの自然環境保全地域をご紹介
これらの地域は、環境省や都道府県によって厳格に管理されており、その保全活動は、生物多様性の維持と、将来世代への自然環境の継承に大きく貢献しています。
地域名 | 所在地 | 面積 (ha) | 特徴 |
屋久島 | 鹿児島県 | 1,219 | 温帯針葉樹林、屋久杉などの貴重な植物が生息。 |
南硫黄島 | 東京都 | 367 | 熱帯・亜熱帯の豊かな植生と、固有種を含む多様な生物が生息。 |
大井川源流部 | 静岡県 | 1,115 | 豊かな植生と多様な動物相、清流の自然環境が特徴。 |
白神山地 | 青森県・秋田県 | 14,043 | 日本最大級のブナ天然林が広がり、世界自然遺産にも登録。 |
十勝川源流部 | 北海道 | 1,035 | 高い自然度を誇る植生と動物相。手つかずの自然が残る地域。 |
他にも多くの自然環境保全地域が存在します。
それぞれの地域が独自の生態系と美しい景観を有し、日本の豊かな自然の多様性を象徴しています。
これらの地域では、立ち入り制限や、採集・伐採などの行為が規制されている場合もあります。
貴重な自然を守るため、ルールを守って訪れましょう。
自然保護区
豊かな自然を守り、未来へと継承する重要な役割を担っています。
主な種類は以下の通りです。
- 自然公園: 美しい景観と豊かな生態系を守るため、自然公園法に基づき指定。国立公園、国定公園、都道府県立自然公園がある。
- 鳥獣保護区: 野生鳥獣の保護と管理を目的とし、狩猟の規制なども行われる。
- 自然環境保全地域: 特に保護が必要な自然環境を守るため、自然環境保全法に基づき指定。原生自然環境保全地域と自然環境保全地域がある。
- 生息地等保護区: 絶滅のおそれのある野生動植物の生息地や生育地を保護する。
- 保護林: 森林法に基づき、森林の生態系を守るため指定。生物群集保護林などがある。
- ラムサール条約登録湿地: 国際的に重要な湿地として登録され、水鳥や湿地生態系を保護する。
これらの保護区は、生物多様性の維持、環境教育、観光資源としての活用など、多様な役割を担っています。
それぞれの地域で特定の行為が制限されており、環境への影響を最小限に抑えるための管理が行われています。
日本のラムサール条約登録湿地は、国際的に重要な湿地の保全
日本は、2024年12月現在、53ヶ所の湿地をラムサール条約に登録。
国際的に重要な湿地として認められ、保全・再生の努力が続けられています。
ラムサール条約登録湿地の重要性
ラムサール条約登録湿地は、以下の点において重要な役割を果たしています。
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生物多様性の保全: 多様な動植物が生息する重要な場所で多くの絶滅危惧種も生息しており、その保護に大きな役割を果たしています。
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水鳥の生息地: 渡り鳥を含む様々な水鳥にとって、繁殖地、越冬地、あるいは中継地として欠かせない場所。
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地域の生態系の維持: 湿地は、水質浄化、洪水調節、地下水涵養など、周辺地域全体の生態系を支える重要な機能を持っています。
条約の柱
ラムサール条約には3つの主要な柱があります。
- 保全・再生: 湿地の生態系全体と地域社会の生活を守るために、幅広い保全活動が提唱されています。
- ワイズユース(賢明な利用): 地域住民が湿地から得られる自然資源を持続可能に利用しつつ、その保全も両立させることが求められます。
- 交流・学習(CEPA): 湿地の保全や賢明な利用には、人々の交流と学びが不可欠であるとされています。
代表的なラムサール条約登録湿地
日本を代表する登録湿地
湿地名 | 所在地 | 面積 (ha) (概算) | 特徴 |
釧路湿原 | 北海道 | 7,863 | 低層湿原、タンチョウの繁殖地として有名。 |
琵琶湖 | 滋賀県 | 65,984 | 日本最大の湖、多様な水生生物が生息。 |
阿寒湖 | 北海道 | 1,318 | マリモの生育地として有名。希少な魚類も生息。 |
宮島沼 | 北海道 | 41 | マガン(ガンカモ類)の大規模な越冬地。 |
志津川湾 | 宮城県 | 5,793 | 藻場が発達し、多様な海洋生物が生息する。 |
涸沼 | 茨城県 | 935 | 汽水湖、多くの水鳥の飛来地。 |
他にも沢山あります。
沖縄のラムサール条約登録湿地:多様な自然が織りなす貴重な生態系
沖縄県には、様々な特徴を持つラムサール条約登録湿地が存在し、豊かな自然環境と生物多様性を支えています。代表的な5つの湿地を詳細に見ていきましょう。
1. 久米島の渓流・湿地
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所在地: 沖縄県久米島町
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登録年月日: 2008年10月30日
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面積: 255ha
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特徴: 久米島中央部の宇江城岳を源流とする渓流とその周辺の湿地、森林。
日本で唯一の淡水性ヘビであるキクザトサワヘビの生息地として知られ、希少野生生物の重要な生息地。
保護形態は宇江城岳キクザトサワヘビ生息地保護区管理地区です。
2. 慶良間諸島海域
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所在地: 沖縄県渡嘉敷村・座間味村
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登録年月日: 2005年11月8日
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面積: 8,290ha
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特徴: 日本で確認される造礁サンゴの62%の種が生息する、代表的なサンゴ礁海域。
サンゴ礁特有の魚類の幼生の生育の場としても重要な役割。
慶良間諸島国立公園海域公園地区に指定。
3. 漫湖
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所在地: 沖縄県那覇市・豊見城市
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登録年月日: 1999年5月15日
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面積: 58ha
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特徴: 那覇市と豊見城市の市街地を流れる河川が合流する河口湖で、干潟が発達。
シギ・チドリ類、カモ類、クロツラヘラサギなど多くの渡り鳥の中継地として重要な役割。
国指定漫湖鳥獣保護区漫湖特別保護地区に指定。
4. 与那覇湾
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所在地: 沖縄県宮古島市
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登録年月日: 2012年7月3日
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面積: 704ha
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特徴: 宮古島最大の干潟。
底生生物や甲殻類が豊富で、渡り途中のシギ・チドリ類などの多くの鳥類の採餌や休息地。
国指定与那覇湾鳥獣保護区与那覇湾特別保護地区に指定。
5. 名蔵アンパル
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所在地: 沖縄県石垣市
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登録年月日: 2005年11月8日
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面積: 157ha
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特徴: 石垣島西部の名蔵川河口部の干潟とマングローブ林。
亜熱帯地域の多様な自然環境が残されており、様々な鳥類や底生動物、甲殻類が生息。
国指定名蔵アンパル鳥獣保護区名蔵アンパル特別保護地区、西表石垣国立公園特別地域に指定。
未来への継承:私たちにできること
自然環境の保全は、行政だけでなく、私たち一人ひとりの行動が重要です。
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自然環境保全地域への理解と協力: 訪問する際には、ルールを守り、自然への影響を最小限にするよう心がけましょう。
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環境問題への意識向上と行動: 日常生活における省エネルギー、ゴミの削減、リサイクルなど、環境負荷を低減する行動を積極的に実践しましょう。
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地域社会への参加: 地域の自然保護活動に参加したり、環境問題に関する情報発信を行うなど、地域社会への貢献を意識しましょう。
日本の豊かな自然を守るためには、長期的な視点と多様な主体による連携が不可欠です。自然環境保全地域やラムサール条約といった枠組みを理解し、私たち一人ひとりが自然環境保全に貢献していくことが、未来世代へ美しい自然を引き継ぐために重要です。